名古屋市東区の歯医者 稲熊歯科の自費治療の案内

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【インプラント(人口歯根)】
1960年代にブローネマルクによりチタンが骨にオッセオインテグレーションすることが発見され、1965年にオッセオインテグレーティッドインプラントの臨床応用が開始されました。以来半世紀以上が経ってインプラントも治療法の選択肢の一つになっています。

稲熊歯科ではジンマー・バイオメット社の3iインプラントまたはノーベルバイオケア社のインプラントを使用しておりますが、これらは世界標準のメーカーですので安心です。インプラントは1本35万円で手術代と差し歯代を含みます。手術前のCT撮影とシムプラント@による術前診断が別途必要になります。

稲熊歯科では顎の骨がやや不足していてインプラントがそのままでは埋入しづらい方には自家骨移植、メンブランやメッシュを使ったGBR、ソケットリフト、サイナスリフトなどの骨造成も行っています。

ボーンアンカードブリッジと言いますが、総入れ歯をお使いの方で、土手も低くなってしまい総入れ歯では不自由で仕方ないと思われる方は、顎の土手にインプラント(人工の歯根)を数本埋入して、人工の歯と人工の歯肉をその上に固定する方法があります。総入れ歯のように食事中に動いてしまったり転覆して外れてしまうということがありませんので、しっかり何でも食べることができます。

オールオンフォー(All-on-4)と言いまして、ボーンアンカードブリッジの方法の一つですが、これはドクターマロー(Paulo Malo)という業界では有名なドクターが開発しました。やはり総入れ歯をお使いの方が顎の土手にインプラントを4本から5本と従来法より少ない本数を埋入してその上にブリッジを装着するものです。上顎250万円、下顎230万円。

 

<引用文献>

#Intra-osseous anchorage of dental prostheses. I. Experimental studies. Brånemark PI, Adell R, Breine U, Hansson BO, Lindström J, Ohlsson A. Scand J Plast Reconstr Surg. 1969;3(2):81-100.

#Osseointegrated titanium implants. Requirements for ensuring a long-lasting, direct bone-to-implant anchorage in man. Albrektsson T, Brånemark PI, Hansson HA, Lindström J. Acta Orthop Scand. 1981;52(2):155-70

  

 <治療のイメージ>

1)「義歯でなくインプラントをしたい」と主訴で来院。上顎小臼歯の2歯欠損。医療用のCT撮影後にシムプラント@により立体画像にデータ変換した画像によってインプラント埋入の手術計画を行う。歯科用のコーンビームCTではなくて医療用CTによる撮影なので骨の硬さがハンスフィールド値(CT値)で正確に把握でき、埋入時に骨に掛けるトルクやドリリングの術式の計画に失敗がない。シムプラント@による精査によりインプラントの直径や長さを決定して埋入。骨欠損部には細片骨をおいて骨造成を行う。

2)「総入れ歯が不安定でインプラントをしたい」との主訴で来院。下顎無歯顎の患者。特に臼歯部では顎堤吸収が進んでいる。「しゃべる仕事なので義歯の脱離をいつも不安に思う」とのこと。下顎にインプラントを数本埋入してボーンアンカードブリッジを装着した。

 

 【審美歯科】

審美歯科ではメタルボンド、ジルコニアなど各種行っています。

A  オールセラミックス

オールセラミックスとは被せ物あるいは差し歯がすべてセラミックでできていることを言います。現在ではジルコニアという硬い物質をベースする方法が主流になっています。

①ジルコニア マルチファイブ : 16色の基本色から選択された5色構造を持ったジルコニア塊をコンピューター支援設計により削り出して被せ物を製作します。ジルコニア塊は歯頚部色、ボディー色、エナメル色までのすべてを、基本色(シェード)と透明度の両特性が5層のグラディエーションで表現されたベース材料を使用します。5色構造のベースになるジルコニアの上にさらに、患者さん自身の周囲の歯や肌の色に合う陶材を数層築盛することでさら審美性がさらに増します。単色のジルコニアと比べると本物の歯に見える優れた審美性を有します。強度がありブリッジへの使用が可能です。前歯や臼歯(奥歯)にオールラウンドに対応できます。

②ジルコニア スーパーハイトランス: 透明感の強い3色のグラディエーションをもつジルコニア塊(ディスク)をベースに使用して被せ物を製作します。透明感があるために特に前歯や犬歯(糸切り歯)、さらに奥の小臼歯に使用します。単色のジルコニアよりもリアルで優れた審美性があります。陶材を数層築盛することでさらなる審美性を追求できます。ただし、強い透明感のため被せ物の土台にはファイバーコアが別途必要になる場合があります。またブリッジには使用できません。

③ジルコニア スタンダード: ジルコニアのベースとなる明るさを生かしてベーシックな基本色により作製します。前歯、犬歯、奥歯、ブリッジへの適応が可能。ジルコニアのステイン処理(着色すること)で透明感は出ないものの、シェードガイド色(歯のA系統、B系統、C系統、D系統のそれぞれの多彩な基本色)にまでは色を適応させることができます。

ジルコニアスタンダードのクラウンは優れた審美性には劣るものの最強の強度を誇り、奥歯でも欠けること(チッピング)がありません。

④イーマックス(E-MAX @):イーマックスのセラミックスの上にセラミックを築成しリアルなイーマックスならではの透明感のある美しさが実現します。前歯、犬歯、小臼歯までの適応になります。

⑤イーマックス(E-MAX @)インレー:イーマックスのインレーではハイブリッドインレーのような経年着色がありません。

 

B メタルボンド

1956年頃からメタルボンドポーセレンは60年以上も使用され、利点欠点が十分に解明されている補綴法です。

①メタルボンド エステティック:セミプレシャスやプレシャスなどのゴールドの含有量が多い金合金をフレームにしてセラミックスを多層に築盛することでリアルな審美性を発揮します。前歯、犬歯、臼歯、ブリッジまであらゆる症例に適応できます。

②メタルボンド:従来型のメタルボンドです。ベーシックなシェードガイドに対応します。 

 

C ハイブリッド補綴: メタルをフレームにしてその上にハイブリッドセラミックスを築成するブリッジやクラウン(被せ物あるいは冠のこと)、あるいはインレーが可能です。

 

D ミリングジルコニアデンチャー: 通常入れ歯の場合はご自分の歯にクラスプ(輪っかのような留め金)をはめ込んで固定するのですが、自分の歯に半月状に留め金が見えてしまうために審美性に劣ってしまうということがあります。クラスプをかける歯を二本ジルコニアの被せ物にすることで、人の目に触れる頬っぺた側の留め金をなくすことが可能になります。

 

<治療のイメージ>

「下の奥歯が銀歯になっているのが数本あり目立つので以前から気になっていたが白くできないか」との相談で来院。奥歯をセラミックで修復したことで、実物そっくりの歯にみえる。

 

【レーザー治療】

稲熊歯科では高出力レーザーによる歯肉切開や根管治療は従来法に比べて効果が小さい経験から高出力レーザーの治療は現在行っていませんが、低出力レーザーを痛みの顕著な口内炎や知覚過敏、リンパ節炎に応用することで著しい効果を得ていることから低出力レーザーの治療を積極的に行っています。

 

<治療のイメージ>

「口内炎がたびたびできて今日はひりひりと痛くて仕方ない。レーザー治療をしているならしてほしい」とのことで来院。レーザーにより疼痛は著しく改善。

 

 

Inagumasika   INAGUMA Masahiro

 

 

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【矯正治療】
 1)成人矯正で行われるワイヤー治療では、ロスなどのエッジワイズブラケットも用いますが、稲熊歯科で主に使用するのはティップエッジ(Tip-Edge)ブラケットです。

ティップエッジブラケットを開発したのはピーター・ケスリング(Peter C. Kesling)です。この人は傾斜移動の考案者であるベッグ(P. R. Begg)の正式な継承者であることもあり、傾斜移動のできる改良型エッジワイズブラケットを開発しました。

ティプエッジブラケットは治療開始時に歯冠の傾斜移動を行うため小さな力で歯の移動を行うことができ、そのために治療の弊害として生じる大臼歯の近心移動などアンカーロスを防ぐのに有利です。また小さな力で歯の移動を行えるため、小さなアンカースクリューを顎の骨に埋入して固定源に使うアンカースクリュー矯正には有利です。

2)アンカースクリュー矯正は従来の方法では困難な症例にも適応できます。例えば大臼歯の圧下、歯列全体の遠心移動、適応年齢を超えた正中口蓋縫合の急速拡大などです。また大臼歯の頬舌的傾斜の整直や転位埋伏した犬歯の牽引なども楽に行えます。アンカースクリューは顎骨に埋入されて固定源になるため、大臼歯を固定源にする従来法に比べて歯のアンカーロス(大臼歯の近心移動)が起こりませんので治療がスムーズです。

3)小学生からの矯正治療には咬合育成を行っています。反対咬合や過蓋咬合、叢生などの不正咬合は思春期を過ぎてからの治療では抜歯が避けられないことが多いのですが、小学生の低学年からの混合歯列期に治療をスタートすることで額の成長や噛み合わせのコントロールを行うことができ、非抜歯による治療が可能になります。

4)治療費は混合歯列期の咬合育成35万円、咬合育成後に必要があれば行う歯列矯正35万円、成人矯正55~70万円。アンカースクリー矯正、アクアフレーム矯正(マウスピースを用いた矯正)、スピード矯正(外科的歯列矯正)、乳児期の反対咬合を治療する機能的矯正装置ムーシールド@など行っています。

 

<引用文献>

#Tip-Edge Plus Guide and the Differential Straight-Arch Technique  Sixth Edition by Peter. C. Kesling. 2006

#Treatment mechanics in Class III open bite malocclusion with Tip Edge technique.  Miyajima K, Iizuka T. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1996 Jul;110(1):1-7.

#Tip-Edge Orthodontics and the Plus Bracket, 2nd edition. Richard Parkhouse.  MOSBY ELSEVIR.

#Begg Orhodontic Theory and Technique  Third Edition. P. R. Begg and P. C. Kesling. W. B. Saunders Company.

 

<治療のイメージ>

「受け口を直してほしい」との主訴。下顎前突の症例で混合歯列期に来院。下顎の成長抑制や上顎の側方拡大などの咬合育成を行ったのち、下顎の成長が止まったところで、下顎骨にアンカースクリューを埋入し、固定源に使用して、ブラケットを装着してから下顎歯列の遠心移動をアンカーロスなしに有利に行った。咬合育成ができているので非抜歯で矯正を行うことが可能になった。

 

<ティップエッジ矯正の創設者>

矯正歯科ではブラケットという名前の小さな四角いボタンのような装置とワイヤーを歯につけて治療することがあります。ブラケットには色々な種類とメーカーがありますが、当院では主にティップエッジブラケットを使います。米国でもこのブラケットは盛んに使われています。また、米国の矯正歯科のハンドブックにも代表的なブラケットとして紹介されています。

ティップエッジブラケットに関わるケスリング家3代のことや縁が深い研究者のことなどを話そうと思います。

 

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ティップエッジブラケットは米国人の矯正歯科医のピーター・ケスリング(Peter C. Kesling/1932年/昭和7年生まれ)によって開発されました。ピーター・ケスリングは米国の五大湖の一つミシガン湖の沿岸にあるシカゴから湖沿いに80キロ離れたインディアナ州ラ・ポートで1932年に生まれました。セントルイス大学の矯正歯科学の准臨床教授(Associate Clinical Professor)を長くしていました。1986年/昭和61年にティップエッジブラケットを開発しました。これは当時開発されて間もないリボンアーチブラケットとエッジワイズブラケットの良い点を組み合わせたものと言われています。

 

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ピーター・ケスリングの父は矯正歯科医でハロルド・ケスリング(Harold. D. Kesling/1901年/明治34年~1978年/昭和53年)です。ハロルド・ケスリングはエッジワイズ・テクニックで矯正治療を行なっていましたが当時のテクニックでは上手くいきませんでした。ハロルド・ケスリングはオーストラリアのベッグのもとに行き、ベッグ法の技術やライトワイヤーテクニックについて学びました。それ以来、ハロルド・ケスリングは治療をベッグ・テクニックに切り替えました。ハロルド・ケスリングは息子のピーター・ケスリングとともに、米国で広くベッグ・テクニックのセミナーと研修を行い、米国でのベッグ・テクニックの普及に寄与しました。ハロルド・ケスリングはトウース・ポジショナーを開発しました。当時はどうしても仕上がりの悪い症例ができて、それをトウース・ポジショナーできれいに仕上げようとしたのです。1945年/昭和20年に詳しく論文発表されました。トウース・ポジショナーはワンピースで弾性、弾力がある装置で、歯冠および一部歯茎の頰側と舌側を覆います。ポジショナー療法で要求される術者のスキルは診断であり、装置をつけるための患者の協力が要ります。治療前の口腔模型の歯を並び替えて治療完了後の目標とする歯並びに模型を再構成したあと、それに基づいてポジショナーを製作するのですが、この再構成の過程をセットアップといいます。トウース・ポジショナーは「マウスピース矯正」の装置の最初のものです。ベッグはトウース・ポジショナーを使いませんでしたが、それはオーストラリアでは容易にそれを入手出来なかったからです。マウスピース矯正は現在、米国でも日本でも流行して盛んに行われています。しかし元々はトウース・ポジショナーはブラケットなどの固定装置による矯正治療の仕上げや動的治療後の保定のために用いていました。ハロルド・ケスリングは矯正歯科材料の会社のティーピー・オーソドンティクス(TP Orthodontics Inc.)を設立しました。ティーピー・オーソドンティクスのティーピーはトウース・ポジショナーの略称だということです。

 

ベッグ(P. R. Begg/1898年/明治31年~1983/昭和58年)はオーストラリアの西オーストラリア州クールガーディーで生まれました。1923年/大正12年にメルボルン大学で科学(Science)の学位を取得しました。ベッグは若い時には商業的成功の必要条件となるような強い心、しなやかなアスリートの身体、そして暖かくて人柄のいい性格を持ち合わせていました。ベッグは歯科を勉強しようと決心し、1924年/大正13年に米国カルフォルニア州のロサンゼルスの近くのパサデナに行ってアングルの学校で2年間、矯正歯科の勉強をしました。高名なアングルはセントルイス大学からニューヨーク州ラーチモントの自身の学校、コネチカット州ニューロンドンの自身の学校で教えたあと、健康上の理由から1917年/大正6年からはパサデナの自身の学校で教えていたのでした。アングルの学校の雰囲気は暖かく、ベッグの性分に合っていて、相互に返報するところがありました。カルフォルニアでアングルはリボンアーチ・アプライアンスに取り組んだあと、エッジワイズ・アプライアンスを開発していました。ベッグはここでリボンアーチ・アプライアンスとエッジワイズ・アプライアンスを用いて患者を治療しました。ベッグは、ここでの勉強の最後の数ヶ月間には、アングルが病気の時に時々、教える職務を引き受けていました。その後、ベッグはオーストラリアに戻って南オーストラリア州のアデレードで自身の患者に矯正治療をしていましたが、ディスクレパンシー(歯列のスペース不足による歯列不正)の症例でしばしば失敗しました。強い心と飽くことを知らない強い好奇心で、ベッグはそれらのディスクレパンシーの手がかりを早期に見つけたのでしたがそれはオーストラリアの石器時代のヒトの咬耗(摩耗)咬合を広範囲に研究した結果でした。生きているオーストラリアのアボリジニ人の歯と顎を調査したり、博物館にある太古のヒトの頭蓋骨を調査しました。長きにわたる研究の結果、「歯の咬合は一生を通じて継続的に変化する」「咬合は決して静止の状態ではない」という結論に達しました。この結論により、1928年/昭和3年ベッグはエッジワイズブラケットで教育訓練を受けた者ではおそらく最初であったと思われますが、数本の歯を抜歯することで、残りの歯を首尾よく並べて治療したのでした。ベッグはアングルの原法通りにアーチワイヤーに断面が長方形の角ワイアーを使っていたのですが、同じ1928年から断面の丸いラウンドワイヤーに切り替えてブラケットでそれを使い始めました。1933年/昭和8年にはエッジワイズ・ブラケットではなく、リボンアーチ・ブラケットとラウンド・ワイヤーを用いた矯正治療を始めました。この方法によって、迅速でかつ比較的軽い力によって自由な歯の移動を獲得できました。抜歯した空隙を隣接歯を移動することで閉鎖するには、エッジワイズ・ブラケットを使って歯を動かすと、摩擦が大きいために歯自体が容易に動かないことや、隣接歯が反作用で思わぬ方向に向いてしまうこと、そして患者が痛がるということが起こっていました。それでベッグは抜歯空隙に小さな力で隣接歯の歯冠のみを容易に傾斜させて移動させるようにするために、傾斜移動を起こすことができるリボンアーチ・ブラケットを使ったのです。歯根部の移動はワイヤー治療が進む段階で自動的に歯根も直立しながら移動していきます。このように、治療の始めにまず歯冠が傾斜移動して、その次に歯根が移動する現象によるテクニックをディファレンシャル・フォース・テクニック(Diffarencial force technique?)といい、また角ワイヤーを使った強力な力を要するものではなく、ラウンド・ワイヤーを使った軽い力で痛くなく移動するテクニックをライトワイヤー・テクニックといいます。1938年/昭和13年ベッグは1938年から「ライトワイヤー・テクニックによるディファレンシャル・フォースの原理」を応用しました。このことは1952年発表のストレイとスミスの論文により優位性が証明されました。下顎の4番抜歯で3番、5番、6番が残存していて、エッジワイズメカニズム(エッジワイズブラケットと角ワイヤー使用)で3番と6番を引っ張りあったときに、150グラム以下の力では歯体移動を含めて移動は起こらないが、150グラムから200グラムの力では3番のみが遠心に傾斜移動する。300から500グラムの力では6番が近心移動する。同じことをライトワーヤーテクニックでリボンアーチ・ブラケットを使って行うと、60から70グラムもしくはそれ以下の力で3番の歯冠は遠心の抜歯空隙に傾斜して移動する。緩徐なディスクレパンシーの場合は歯冠部の遠心への傾斜移動をさほどする必要がないから、その時はリボンアーチ・ブラケットのバーティカル・スロット(歯軸方向にある縦のスロット)にアップライティング・スプリングという小さな補助装置を装着すると歯冠の傾斜を抑えることができる。アップライティング・スプリングは1960年にベッグにより開発されました。

ベッグは1940年代に冶金工のアーサー・ウィルコックと働いた時にオーストラリアン・ワイヤーという0.016インチ径のステンレススチールのラウンドワイヤーを開発しました。ティップエッジ矯正ではステンレスステールのラウンドワイヤーは径が0.016インチと0.020インチのオーストラリアン・ワイヤーを現在も使用します。

 

 

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「現代矯正歯科学の父」といわれるアングル(E. H. Angle/1855年/安政2年~1930年/昭和5年)はブラケット型の矯正装置を4つ開発しました。

1907年/明治40年にアングルは特定の症例に対して矯正治療前に抜歯をすることを初めて提唱しました。抜歯してできた空隙に隣接歯の歯冠を傾斜させることによって抜歯部位を閉鎖する装置を考案し、歯を自由に傾斜させることの重要性を強調しました。三次元的に全歯をコントロールできる装置を開発しようとました。1907年/明治40年アーリー・フィックスド・アプライアンスを開発。これにはヘビー・ラウンド・エキスパンジョン・アーチと呼んでいましたが、硬くて断面が丸くて太い針金が歯列弓状に曲げられて両端にはエキスパンジョン・チューブが付いていました。1910年/明治43年ピン・アンド・チューブ・アプライアンス、1915年/大正4年リボンアーチ・アプライアンス、そして1925年/大正14年のエッジワイズ・アーチ・アプライアンスを開発していきました。リボンアーチ・アプライアンスはバンドにはんだ付けされた縦のブラケットに歯頚部側に開くスロットにワイヤーを通してからロックピンでとめました。アングルは歯根を動かすために、リボンアーチ・メカニズムと後のエッジワイズ・メカニズムに、バンド・ブラケットと大臼歯チューブと共に、断面が四角の角ワイヤーを導入しました。

そのうちよく使われるようになったのはリボンアーチ型ブラケットとエッジワイズブラケットです。リボンアーチ型ブラケットはベッグが好んで使用するようになり、エッジワイズブラケットはツイード(C. H. Tweed)が好んで使用しました。現在最も広く使われているブラケットは改良されたエッジワイズブラケットです。

 

最初に紹介しましたが、ピーター・ケスリングは1986年/昭和61年にティップエッジブラケットを開発しました。エッジワイズブラケットのアーチワイヤースロットに改良を加え、歯冠が近心や遠心に傾斜できるように、スロットのワイヤーを把持する4つの角から三角形の2つの対角を取り除いたことです。これはリボンアーチブラケットとエッジワイズブラケットの良い点を組み合わせたものです。このブラケットによってベッグ法のテクニックを使うことができます。

ブラケットにラウンドワイヤーを装着すると、ブラケット・スロットの対角のエッジを支点に歯冠を傾斜させるので、アーチワイヤースロットは022インチから徐々に028インチまで拡大します。その後、抜歯空隙をパワーチェーンなどで閉鎖すると傾斜した歯根と歯冠は整直して行きます。歯冠の整直を強力にするときにはアップライティング・スプリングという補助的装置(オーギジラリー)を用います。歯冠が整直するとアーチワイヤースロットは028インチから022インチに戻ります。歯根にトルクをかけるときはラウンドワイヤーから角ワイヤーに交換します。これはベッグによって開発された近遠心的アップライティング・スプリングがあったために可能になったことです。迅速で比較的軽い力によって自由な歯の移動ができます。ティップエッジブラケットを使うシステムでは抜歯空隙の閉鎖、顎の前後的関係の改善や前歯の挙上・圧下が容易に行えます。

 

ティップエッジブラケットにはバーティカルスロットという縦方向にスロットがあります。通常のエッジワイズブラケットにはないものです。このバーティカルスロットにオーギジラリーと言っていますが補助的装置を入れることができます。サイドワインダースプリングを入れると、歯軸を近心方向にも遠心方向にも一歯だけでも多数歯でも自由に傾斜させることができます。また角ワイヤーと同じ様に歯根にトルクをかけることができます。

 

このブラケットによってベッグ法のテクニックを使うことができます。アングル2級の過蓋咬合の症例でオーバージェットが20ミリ程度あってもラウンドワイアーにアンカーベンドを屈曲することで劇的に改善されます。このテクニックで従来なら上顎の骨切りによる顎矯正を行っていた症例のうちの比較軽度あるいは中等度の症例は手術なしに改善されます。また開口症例も臼歯部の圧下がアンカーベンドの使用により同時に行えますから、手術することなしに矯正歯科治療のみでの治療が可能な場合が多々あります。臼歯部の圧下がワイヤーのアンカーベンドでのみでは難しいような症例ではミニインプラント(アンカースクリュー)を併用すると圧下が容易になることがあります。

 

クリストファー・ケスリング(C. Kesling)は通常のスロットのもう一層ベース(基底部、基底面)側にディープトンネルというスロットを開発し、そこに形状記憶合金のニッケルチタンワイヤーを通すことでサイドワインダースプリングと同じく、歯根にトルクをかけて、歯根をパラレルに配置することができます。ティップエッジブラケットはこのように進化しています。

 

クニアキ・ミヤジマはピーター・ケスリング(前述)やマクナマラ(James A. McNamara, Jr. 矯正歯科医)とは親交が深く、米国セントルイス大学で臨床教授をしました。ティップエッジ矯正を本邦に導入した最初の矯正歯科医です。米国の矯正学会の学術大会で招待演者になりました。本邦の矯正医で招待演者になったのはたった数人です。

 

<引用文献>

#Begg Orhodontic Theory and Technique  Third Edition. P. R. Begg and P. C. Kesling. W. B. Saunders Company.

#  Clinical Orthodontics volume one. Charles H. Tweed. The C. V. Mosby Company. Saint Luis 1966.

Tip-Edge Plus Guide and the Differential Straight-Arch Technique  Sixth Edition by Peter. C. Kesling. 2006

   宮島邦彰訳 日本ティップエッジ矯正研究 2015年



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